書を合気修行の一環にしたいという思いは、昨日述べたとおりです。
では具体的にはどういった内容になるのかをお話したいと思います。
まず教材ですが、基本は漢字となりますので、中国の古典書を用い
ます。剣を持つにも、手の握り、振り上げ、振り下ろし等、最低限
身につけなければならない約束事が有るように、書においても、い
きなりという訳にはまいりませんので、下記の順番で臨書を学んで
いきます。
1.「九成宮醴泉銘」→ 「孔子廟堂碑」
上記二書は、楷書の極則と言われております。
用筆を学ぶ上で、必ず学ばなければなりません。
座り技で、基本を学ぶことと同じです。
2.「自書告身帖」
これも楷書で、顔真卿という武将であり要職にあった人だけに
呼吸の深い書風となっています。
座り技での呼吸技の入り口となります。
3.「温泉銘」
唐朝第二代皇帝で、歴代帝王中最も傑出した英君と称えられた
太宗皇帝の書です。
行書ですので、1,2を臨書したあとであれば、取り組み易い
です。懐が広く、品格があります。
常々、合気流道の稽古では、相手の大小に関わらず、「目線は
常に上から技をかける」と指導していますが、この書を臨書す
ることで理解が深まります。
4.「祭姪文稿」
2で学んだ、顔真卿の行・草書体です。手紙文の為、呼吸の
起伏がそのまま書に表れており、“書は人なり”の書です。
私が書道を学び始めた頃、最初に習った古典でした。
この呼吸はその後、「立ち技3・9番」に生かされています。
5.「書譜」
いよいよ最後の教材です。孫過庭の書譜です。
草書体ですので、呼吸技のヒントが至る所に散りばめられて
います。
最後に、私達合気流道を修行する者は、書の道を極めるために
書を学ぶのではありません。細かい点は書道の専門家に譲り、
合気流道の稽古で体得した呼吸を頼りに、先人の呼吸を感じ取
ることです。
目の前に立つ者のみが稽古相手ではありません。物に気が通る
以上、先人の書いた書に気が通らぬ訳がありません。
太宗を相手に合気流道の稽古も出来るのです。